レギュラー番組/菅原明子の「エッジトーク」

●ゲストー宗教人類学者の植島啓司さん
≪ 今回、2週にわたってお送りするゲストは、宗教人類学者の植島啓司さんです。植島さ...≫


今回、2週にわたってお送りするゲストは、宗教人類学者の植島啓司さんです。植島さんの著書「生きるチカラ」(集英社新書)を中心にお話を伺いました。

菅原:1947年東京生まれということで、私と同じ年なんですけども、先生の経歴の中では東京大学の文化人類学の大学院で博士課程終了と。その後、シカゴ大学の大学院に留学、そして関西大学教授、ニューヨークのニューススクール。いろんなところで客員教授をされたりしていますが、海外の生活は長くいらっしゃったんですか?

植島:20代のころは、ずっとシカゴ大学で76年から4年くらいいて、あとはアメリカで1年半くらい。半年とか、3ヶ月くらい滞在したことはたくさんあります。調査が主なんで、長逗留というわけでないんですが、そういうったことが多くなった理由だと思います。
菅原:この本の中にあるいろんなお話はとても大学の教授という視点では、書き得ないくらい幅が広く、深く、あたたかさとやわらかさがあって、今の若い学生にぜひ読んでほしい一冊という印象を受けたんですが、哲学書ともいえるし、人生訓ともいえるし、、どんな視点でお書きになったんですか?

植島:端的に申し上げますと、海外にいるといろんなことが起こります。自分の思ったとおりにいかないことが多くて、電車とかバスとかがちゃんと時間に来たためしがないんです(笑)

菅原:(笑)

植島:そういうのが当たり前になってくると、こちら側が計画立てて行動することのバカらしさみたいなものが身に染みてわかってくる。そして、向こうに合わせようという旅を30年以上続けてきたわけですから、じゃあ、日本の中でキツキツした生活をしてる人達に対して、もうちょっと楽な生き方を海外でいくらでもできるんだということを書いてみたいなと思ったんです。

菅原:今、若い人達は夢や希望が削られていって、小学校の頃、低学年から塾のお勉強をして中学を受験して、それを失敗したら高校受験して、大学入ったら2年生くらいからしゅうかつがはじまり、勉強する時間は大学に行ったときにあるのかというくらい自由じゃないですよね。こんな国は日本だけではないかと思うんですけど、自分の価値観が持ちにくい時代ですね。

植島:路線から外れたらもうおしまいというような危機感があるんですよね。

菅原:でも、本当はそう思っちゃうと不幸になりますよね。

植島:そうですね。いろんな選択肢があるという社会の方が豊かな生活を送れるんですが、日本の場合は、いい学校に所属する、いい会社に所属するという一箇所に属するところが安定しないと生きてる甲斐がないというか。

菅原:そういう中で、海外から視点から見た時には「もっと自由でいいんだよ」とかね、そんなに失敗したことを失敗と思う必要はないんだよ、というようなやさしいものがたくさん出てくるんですけど、これは全部、ご自身の体験の中から生み出されたものですか?

植島:そうですね。まさにそのとおりで。アフリカとかエチオピアとかモロッコとかいろんな例をだしてるんですが、僕はたいてい宿を予約して旅したことはなくて、エチオピアでもモロッコでもそうなんですが、行ったら子供たちが寄ってくるんです。

植島:寄ってきた子供たちは小遣いを狙ってたりするから、日本人の団体観光客はあらかじめ「相手にしないでください」とか言われるてるんですが、僕は相手にすることにしていて、その子達を呼んで、「君ちょっと僕のバッグを見ておけ、他の子達の中で誰か安い宿を知ってる人がいたら案内してよ」とかいうようなところから入っていくことにしていて、今までバッグをとられたりとかだまされたりしたことはほとんどないので、面と向かって、接すれば変なことは起こらない。過剰になるとよくないんじゃないかなと。日本人は安いところに泊まると汚いとかいろんな先入観があって、7,8000円くらいの中流のホテルに泊まりたがったりしますけど、僕は500円とか1000円くらいのところにしか止まらないので、泥棒にもあわない。

菅原:そこには金持ちは絶対いないぞみたいな。

植島:そうですね。

■植島 啓司(うえしま けいじ)

1947年東京生まれ。宗教人類学者。東京大学卒。東京大学大学院人文科学研究科(宗教学専攻)博士課程修了後、シカゴ大学大学院に留学、M・エリアーデらのもとで研究を続ける。NYのニュースクール・フォー・ソーシャルリサーチ客員教授、関西大学教授、人間総合科学大学教授などを歴任。著書に『男が女になる病気』『分裂病者のダンスパーティ』『オデッサの誘惑』『聖地の想像力』『「頭がよい」って何だろう』『性愛奥義』他。