レギュラー番組/菅原明子の「エッジトーク」

●ゲストー映画監督・鎌仲ひとみさん
≪今回、2週にわたってお送りするゲストは、映画監督の鎌仲ひとみさんです。鎌仲さんが...≫


今回、2週にわたってお送りするゲストは、映画監督の鎌仲ひとみさんです。鎌仲さんが肥田舜太郎さんと共著した「内部被曝の脅威」(ちくま新書)を中心にお話を伺いました。

菅原:今夜は、みなさんお待ちかねの本を紹介したいと思います。3月11日に福島原発の事件がありましたが、その後、私たちはどれだけの情報を正しく理解したのか。そのことを今日は詳しくお話いただける内容になると思います。

菅原:この本が出たのは原発事件より前なんですよね。

鎌仲:2006年に出版しました。

菅原:その時期はこういう内容が話題にならない時期ですよね。

鎌仲:そうですね。だから売れ残ってまして、最初に刷った分が初版12000冊くらい刷ったんですが、ずっと残っていて売れなかったんです。

菅原:今は書店の中で平積みで、まとめてありますよね。目次を見ると「この本、賛成派の人?この本はちゃんとしてる人?」ってだいたいわかるんですよ。(笑)なんか変ですけどね。この本は中身が濃いし、本当に魂の訴えかけというレベルでとても感動的な本ですね。

鎌仲:ありがとうございます。

菅原:鎌仲さんが監督された「ミツバチの羽音と地球の回転」という映画が上映されているんですよね。

鎌仲:はい。つい、この間まで東京の劇場で上映されておりまして、あまりにもたくさんの方が来てくださって入りきらなかったものですから、渋谷のユーロスペースという劇場で6月4日から再上映が決まっています。全国の劇場と、それから自主上映という形で市民の方々がこの映画を借りて自分たちの試写会をやるという形で今、全国でものすごく上映されているんですね。

鎌仲:これは最新作なんです。これを含めて3本。核、原子力、エネルギーをめぐる三部作を作ったんですね。一本目が「ヒバクシャ 〜世界の終わりに〜」2本目が「六ヶ所村ラプソディー」なんです。

鎌中:一本目の「ヒバクシャ 〜世界の終わりに〜」を作った時にイラクに行ったことがきっかけで「被爆のことを私は何も知らなかった。」と思ったんですね。イラクの子供たちになぜかガンや白血病がすごく増えていた。「原因は、戦争の時に放射性廃棄物から作った劣化ウラン弾を使われたからだ」といろんな方達が言うんですけども、匂いもないし、見えないし、ガイガーカウンターで測っても生活しているところはそんなに高くなかったりするんですよね。「それはなぜかしら」という疑問があって、それをわかりたいがためにいろんなことをしていた中で、ずっと被爆者の医療をやっていた肥田先生にめぐり合ったんです。

菅原:肥田先生とのめぐり合いは、この本を書かれる直前なんですか?

鎌仲:いえ、イラクから帰ってきてNHKの番組を作ったんですが、NHKの中で喧々諤々あって、アメリカは「劣化ウラン弾は健康に悪影響を及ぼさない」とホームページにも書いてると。私が現地に行ってみると、やっぱり尋常じゃないことが起きていて、データやアメリカが言うことと違うことが起きている。それを撮ってきて放送したかったんですけど、政治的な問題をはらんでいて。NHKのプロデューサーさん達の劣化ウラン弾と子供たちの病気との因果関係が100%証明されなければ使いがたい問題ではないかという意見がすごくあって。

鎌仲:私はその問題だけではなく、経済制裁で抗がん剤をイラクにいれてはいけないというようなことになっていたので、薬もなかったわけです。二重三重に子供たちが苦しめられていて、そのことをきちんと伝えたかったんですね。だけど、NHKの中で番組を作る過程でいろいろ削がれていって、エッセンスは放送したんですけど、あまり伝わらなかったという感じがあったんですね。

菅原:消化不良のような言いたいことがきちんと伝わらない程度に間引きされた内容にされてしまったんですね。とても悔しいですね。やはり日本のメディアのひとつの悪いところだと思いますけれども、確証がなければ報道しないと言っているけど、そんなものが証明されるのは何十年後ですか?というところもありますよね。

鎌仲:そうなんです。だから、そういう放射性廃棄物を使った兵器を使った。私もガイガーカウンターを持っていって劣化ウラン弾が不発弾になっているところを測っているんですね。もちろん放射線は高いんですよ。子供たちは病気になっているし、現場のお医者さんたちは「なんかおかしい」と言っている。そしたら、調査が必要ですよね。何か異変が起きている。原因はこれから追求していく必要があるけれども、事実があって、調査される必要があるということを伝える必要はあるじゃないですか。そういうことができなかった。

鎌中:私は、本当の意味で被爆とはなんなのかということが最初の取材ではわからなかったんです。だから、肥田先生に会いに行った時に「イラクの子供たちは被爆者だ」と言われたのが衝撃だったんですね。

菅原:ご自身が被爆経験をお持ちになっていること、たくさんの被爆者を検診してきたお医者さんとしての目線すべてから断言できたんですね。

鎌仲:そうですね。肥田先生は戦後は40万人くらいの広島長崎で被爆した方達が被爆者が日本中に散らばって生きていらして、その方達の定期健診をしながら、50年以上おつきあいをして、その方達の病歴、どんなふうに発症していくのか、どんな健康障害を出していったのかを一人ひとり丹念に視ていらして、「何か共通点がある。」「何かこれはおかしい。」「何かあるぞ」と直感的に感じていたことがアメリカの医師との出会いによって、内部被曝が原因だったとわかった。それも安全だと言われている低線量でも人間の体をダメにしていくということに思い至ったんですよね。

■鎌仲ひとみ(かまなか・ひとみ)

大学卒業と同時にフリーの助監督としてドキュメンタリーの現場へ。初めての自主制作をバリ島を舞台に制作。その後カナダ国立映画製作所へ文化庁の助成をうけて滞在する。カナダの作家と共同制作。NYではメディア・アクティビスト集団ペーパータイガーに参加。95年に帰国してからNHKで医療、経済、環境をテーマに番組を多数制作。98年、イラク取材をきっかけに「ヒバクシャー世界の終わりに」を作る。現在は東京工科大学メディア学部助教授に就きながらその後も映像作家として活動を続けている。